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いとのおはなし

キルト芯の繊維が表面に・・・実は糸が原因?

いとのお話(斉藤) 昔ね、真っ黒い生地の間にキルト芯を挟んで三層にして、キルティングを入れていき、DualDutyのグリーンラベルとフジックスのシャッペキルターの違いを検証するという、面白い仕事の依頼を受けた事があるんだけれども、DualDutyのグリーンラベルは見た目は全然わからないんだけれども、糸が滑らかではないんですね。軸の所に毛羽立った所があるのか、刺していると綿の繊維に糸が引っかかって出てくるんです。
キルティングをしていて、チョロチョロを白い綿が出てくる場合は、糸に原因があるという事も考えられるんです。

(林) キルティングの時の滑らかさというのも大事なんですね。

(斉藤) フジックスのシャッペキルターはそれに比較すると滑らかだったという覚えがあります。

(林) このフジックスの糸は手縫いにも適していて、キルティングも滑らかだったというお話でしたが、先生は、更に次の糸へと移行されて行ったと思うのですが、何か大きな理由があったのでしょうか。

いとのお話(斉藤) そうね。ちょっとピースワークには太いかなと思っていたのと、何しろ色数が少ないんです。
私が次に使った糸はメトラーという糸なんだけれども、これはとても微妙なグラデーションでたくさんの色数があるんです。

(林) メトラーはミシン糸でしょうか。

(斉藤) そうです。メトラーはミシン糸。ですから、たくさんの色数があるんです。メトラーはミシンキルトをされる先生方がよく使われていらっしゃると思うんだけれども、ベルニナのミシンが日本に入って来た頃に、一緒に入ってきた糸だったと思うんです。
メトラーは、キルティング専用糸やコットン100%、それからシルクなどもあって種類も豊富なんです。メトラーはボビンの所を見ると糸の種類がわかるようになっていて、ボビン自体の色が茶色い物は、キルティング専用糸、白いボビンに茶色い文字がコットン、赤い字がポリエステル、それとここにはありませんが、紫の字がシルクです。色でわかるようにもなっているんです。
それに私達女性って、見た目に弱いじゃない(笑)今までの糸と違って、ちょっとコンパクトでお洒落かしらなんて思ったりして。

(林) メトラーの糸にはキルティング専用糸というのがありますが、キルティング専用糸とピーシング用の糸はどのように違うのでしょうか。

(斉藤) キルティング専用糸は滑りが良いように、ワックス加工が施されているんです。

いとのお話(林) その分丈夫でもあると思うのですが、キルティングをする時には、絶対にキルティング専用糸を使わなくてはいけませんか。

キルティングをする時はなるべく布に近い色の糸を選ぶ

(斉藤) 本当は、キルティングには専用糸を使った方が丈夫なんだけれども、専用糸の欠点は色番が少ない事なの。
私の場合はキルティングをする時には、なるべく生地に近い色の糸を使ってキルティングをするので、キルティング専用糸だけでキルティングをするという事は出来ないんです。

(林) その場合は、色がたくさんあるピースワーク用の糸でキルティングを入れるんですね。

(斉藤) そうです。同じ赤でも色々な種類の赤がありますから、生地の色にぴったり合わせて選ぶことができますから。

(林) 丈夫さという点でちょっと心配なのですが、問題ないのでしょうか。

いとのお話(斉藤) そこまで気にする事はないと思います。でも、どちらを重視するかですよね。本当に丈夫なキルトを作りたいと思うのであれば、色の問題は度外視して、専用糸を使った方が良いと思います。でも見た目の美しさなどを重視したいのであれば、ピースワーク用で良いので、色をきちんと選んであげた方がいいでしょうね。
メトラーやこれからお話するギッターマンのピースワーク用は、もともとミシン糸ですから、ピースワークが終わったらキルティングをして仕立てまでできるんです。

(林) 一人三役で使える万能糸という感じですが、先生はかなり長い間、メトラーの糸を使っていらしたと思うのですが、最近、ギッターマンの糸を使われる様になりました。何かきっかけがあったのでしょうか。

いとのお話(斉藤) ギッターマンの糸って、新商品という感じがするけれども、私はよくアメリカに生地の買い付けに行くんですが、メトラーの糸と同じくらいの時期にギッターマンの糸をアメリカで見ているんですよ。
でも、何故かメトラーだけが日本に入ってきて、ギッターマンは日本に入ってこなかったの。なので、自分の分だけを買ってきては、気に入って使っていたんです。
他のメーカーの糸と比較するのはいけないと思うけれども、メトラーより滑らかな気がするんです。特にアップリケをしてみると、糸の滑りの良し悪しってよくわかるんだけれども、ピースワークの時は、グシグシと縫って、最後に生地から針を抜くでしょ。でも、アップリケは、ひと針ずつ針を抜くので、糸の滑り具合がよくわかるんです。ギッターマンはザラザラとした引っかかりがなく、とても滑らかですね。
今はこのギッターマンの糸で、すべてをこなしています。

(林) ギッターマンにはキルティング専用糸というのはないのでしょうか。

(斉藤) あります。でも日本にはほとんど入って来ていないんじゃないかしら。それにね、メトラーもそうだけれど、さっきもお話したように、キルト専用糸って色番が少ないんです。
なので、この糸ですべてこなしてしまって大丈夫です。

初心者の方こそ、糸の色選びが大事

(林) 先生は生地の色に合わせてキルティングの糸を選んでいらっしゃいますが、中には黒い生地を使っても白糸一色でキルティングを入れる先生もいらっしゃいます。やはり糸の色は生地に合わせた方が良いのでしょうか。

(斉藤) どれが正しいというのはないので、ご自分の好みでしていただいて良いと思うのですが、白一色というのは針目がとても目立ちますから、かなりキルティングに自信がないといけないですよね。
なので、初心者の方こそ、キルティングの針目が目立たないように糸の色を選ぶべきだと思います。

(林) そうですね。キルティングの針目が揃うまでは、誤魔化すためにもなるべく色を合わせた方が良いと思います。糸の色を選ぶときのポイントというのは、何かありますか。

(斉藤) なるべく生地と同じ色の糸を選びますが、色がたくさんあるので、例えば同じ赤でもどっちかなって、悩むような時があります。その時には、生地の色より濃い色を選んだほうが良いですね。キルティングを入れると陰影が出ますので、濃い色を選んでおくと、縫った部分が沈んで見えて落ち着くんです。
反対に生地より薄い糸の糸を選んでしまうと、それが気になって縫った部分が浮いて見えるので、目立つんです。

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