(斉藤) そうでしょう。なので、必ずキルティングの時はどんな小さなものでも、文鎮を使って、シンブルをはめて、作業をしていくんです。テーブルの端を使って、半分だけテーブルからはみ出したような格好にします。なるべくキルトを平らに平らにという感じで、キルティングをしていきます。
文鎮がない時代は、こんな風に肘で押さえてキルティングをいれていたの。でもやりにくいのよね。文鎮ができてから、まぁ、楽だ事(笑)押さえてくれている分、力を入れてキルティングをする事が出来るんです。
(林) 肘で押さえていたという話は、以前にベテランのスタッフから聞いた事があります。私のキルティングをいれる体の向きがまっすぐで変よと言われて(笑)確かに文鎮を使っても、体を斜めにしないとやりにくいです。
(斉藤) キルティングが済んだら、バイヤス布でパイピング処理をします。この時にも文鎮が大活躍するんです。こうやって、バイヤス布の印と印を合わせたら、返し縫いでつけていきますが、この時も宙に浮かせて縫うよりも、文鎮で押さえると、とってもやり易いんです。和裁で言う所のくけ台代わり。ちょっと押さえてくれているだけで、しっかりと細かい針目下まですくっていく事ができるです。
そして、パイピングがついたら、縫い代を切りを揃えて、後ろ側に倒してまつるという作業をします。その時にも、押さえておいてからまつった方がとてもスムースに作業ができるんです。押さえてくれているので、両手が使えますから、たたみながらまつっていく事ができます。ベッドカバーサイズのパイピングをつける時も、同じように文鎮を使って作業をします。
(林) はかどり方が違ってきます。
(斉藤) 何がなくても私には文鎮!というくらいこれは必要なの。
布を扱う時にはもちろんなんだけど、例えば、スーちゃんのアップリケをしたいと思った時、本をコピーしてその上に土台布を置いて下絵を写すでしょう。その時にもコピーと生地を重ねた上にずれないように文鎮を置くんです。
その段階から文鎮を使うんです。ですから、図案を写す、アップリケをする、キルティングを入れる、パイピングを付ける、どんな時にも文鎮が必要なんです。それからね、ほんの少しの量の刺しゅうを入れるんだったら、文鎮で押さえていれてしまうの。
(林) 確かに、ここにちょっと刺しゅうをいれようかなと思っても、刺しゅう枠を出してくるのが面倒な時があります。特にキルティングをいれてしまった後に、刺しゅうを足したいと思った時は、便利だと思います。
(斉藤) 今の文鎮は、持ち手がついたので、本当に楽になりました。持ち手が付いただけで、とても移動が楽なんです。
(林) 小さなコースターやお財布ほど文鎮を移動させますから、持つ所がないと手首が痛くなってしまって。
(斉藤) そうよね。これから文鎮を買われる方は幸せよね。ですから、是非使ってみてほしいと思います。
(林) 私も今になってみると、文鎮の便利さが分かりますが、重たい事もあって、なかなか最初に習いに来られて、今日これを買って帰るわって言う方は、なかなかいらっしゃらないんです。
(斉藤) あら。それは残念な事よね。
(林) 使いこなせる自信がないんです。もし、使えなかったら、これほど処分に困るものはないでしょうから(笑)とりあえず、家にある何かで代用するわ、ダンベルがあるのとか漬物石があるの、なんておっしゃるんですけど、まず、無理だと思います(笑)
(斉藤) この大きさでこの重さの物が何かお家にあるかと言われると、見当たらないでしょう。
文鎮ていうと、あ、お習字の文鎮ねっておっしゃるんだけど、全然重さが違うんです。写真で重さを伝えられないのが残念。パッチワークを一年で辞めるなら必要ないかも知れないけれど、パッチワークってやり始めると、本当に楽しいし、一生のライフワークとして楽しめる趣味だと思うのね。
(林) そうなんです。壊れるものではないですから、一回買ったら、一生使っていける道具だと思うんです。
私も最初はパッチワークが続くかしらって思ってましたから、まずは家にある漬物石でやりました(笑)よくホームセンターで売っている、丸くて持ち手が付いた物ですけれど、重さは同じくらいなのに、大き過ぎて押さえる場所を大きく取ってしまいますから、縫える場所が少ないんです(笑)
小さな物を縫う時は、テーブルのギリギリの所まで持ってきますけれど、ボードの上で使う事も知りませんでしたから、滑ってきて危ないんです。なので、すぐに文鎮を買いました。その当時は、まだ持ち手が付いていないタイプの物でしたけれど、それから10年以上使いました。現在は私も持ち手付きの文鎮に変えてしまいましたが、最初の文鎮は手垢で真っ黒になりましたけれど、壊れてはいないです。
(斉藤) 私はこれを30年使ったんだから。いろんな所に催事に行って、デモンストレーションをして、この使い方を説明するでしょう。そうすると、皆さん興味はあるんだけれど、重いし、お値段がはるので、悩まれるのね。でも、以前に買って使っていらっしゃる方が側にいたりすると、これは絶対に無いと駄目よ!なんてすすめてくれるの。
(林) 時々私たち以上におすすめ上手な方っていらっしゃいます(笑)
(斉藤) これは私が自信を持ってすすめているから、今までこんなの要らなかったって言う方は今まで一人もいないですね。使ってみたらとても良かったんですっておしゃって、2個目を買いにこられた方がいたの。二つは要らないですよ。一個でいいのよってお話した事がありました(笑)
お友達が使っていて良さそうだからって、リュックを背負ってわざわざ来てくれた方もいらっしゃいましたね。それくらい使われた方は良さがわかるんです。
(林) 今は針仕事をしようと思ったら、それがどんな作業であれ、まずはボードの上に文鎮と糸立てなどの必要な物を乗せて準備をするところから始めます。
私は先生の作品には到底およびませんが、このボードと文鎮の組み合わせを使うようになってから、作品がまっすぐ綺麗に仕上がるようになったと思うんです。それは、キルティングだけではなく、パイピングなどの仕上がりの部分で非常に良く違いがわかります。
(斉藤) そうね。うちの作品が綺麗にピシッとしているのは、この二つの組み合わせを使っているからなんです。
初心者の方に最初から、全部を揃えなさいというのは無理なのかもしれないけれど、初心者の方こそ、道具を上手に使ってほしいなと思います。そうすることで、作品が綺麗に仕上がるでしょ。そうするとまたやる気がでちゃう。そうやって上達すると思います。
(林) 意外な道具で悩みが解決できる場合がありますので、道具選びはとても重要だと思います。
私はもともとは不器用な方なので、いつも作品がブカブカした感じになっていたのですが、文鎮を使う事でうまく出来るようになりました。そうすると、確かに私って意外とやるわ!次は何を作ろうかなと思います。
(斉藤) そうなのよ。でもね、キルティングに関しては、すべての物がこの文鎮でキルティングできると思ってはいけないんです。
やはり、大きな作品はフープに張ります。ベッドカバーでしたら、キルトスタンドを使います。そうしないと、シワになりますからね。
(林) 文鎮を使ってのキルティングには大きさに限界があると思います。シンブルを使うのに慣れない頃は、フープが苦手ですべてこの文鎮を使って作業しようと思ったのですが、中心の部分までたぐり寄せないといけませんから、却ってシワになってしまいます。
(斉藤) 私が遠方に仕事に行く時は、ボートや文鎮はかさばるし、重いから持って行きたくないんですよ。たった一日の講習会などという時は、できれば身軽で行きたいんだけれど、これがないと仕事にならないから、絶対に持って行くんです。
パッチワークボードと文鎮のおはなし 2/3