(林) 今日は先生に、刺しゅう道具についてお話を伺いたいと思います。
一見、刺しゅうとパッチワークは分野が違うように思うのですが、先生はいつも作品に刺しゅうを施されて、とても素敵な作品に仕上げていらっしゃいます。私もこれまでに刺しゅうを入れた作品を何度も作っているのですが、針目が揃わず、なかなか自分が思うようなステッチにはなりません。お客様の中にも刺しゅうは苦手という方も多いようです。
今日は、先生に刺しゅう道具についてお話を伺って、綺麗な刺しゅうを入れられるようになりたいと思います。
(斉藤) 是非、頑張ってね。
(林) ハイ!(笑)
(林) では、刺しゅう糸から教えていただきたいのですが、刺しゅうという言葉を聞くと、まずはフランス刺しゅうを思い出すのですが、パッチワークに使う刺しゅう糸と何か違いはありますか。
(斉藤) いいえ、全く同じです。でも、パッチワークに使う刺しゅう糸というのは、特に指定がないので何を使っても良いと思うんです。
(林) フランス刺しゅうには25番手の糸を使う事が多いと思うのですが、パッチワークではどうでしょうか。
(斉藤) 圧倒的に25番手を使う事が多いですね。
クレイジーキルトなどには、5番手の太い刺しゅう糸を使われる先生もいらしゃいますが、私は25番手を使う事が多いです。
(林) 25番手というと、昔から六本どりで束になった物を良く見かけますが、六本どりのまま使う事はあまりないですし、取り出しているうちにグチャグチャと汚らしくなってしまいます。使い方を教えて下さい。
(斉藤) このまま単純にラベルの所を押さえて、少し出ている糸を引くだけです。
(林) 六本どりのまま取り出すんですね。
(斉藤) そうです。長さは30cmから40cm位にします。
刺しゅう糸こそ長糸をしてしまうとどんどん毛羽立ちますから、長糸をしてはいけないんです。丁度、この束の倍の長さ位が目安です。
このような出し方をするとあまりバラバラにならないで使っていく事が出来ますね。
(林) 実際にはもっと少ない本数で刺しゅうする場合が多いと思います。本数を少なく使う時にはどのようにしたら良いでしょうか。
(斉藤) まずは、六本のまま必要な長さを引き出して、カットします。
私が刺しゅうを入れる時は、圧倒的に二本どりで入れる事が多いのですが、二本どりで使う時は、二本を一気に引き出すのではなく、一本ずつ引き出して使います。
引き出す時は、針先ではなく、針の穴側でひっかけて引き出します。
そうしたら、糸の端を合わせて針に通していきます。
針も糸の本数に合った針を選んで下さいね。糸を引っ掛けて、指の腹で押さえて穴に通します。
(林) なかなか難しそうですね。糸が輪になるので太くなってしまいませんか。
(斉藤) 針を良く見ると、穴の開いている面は幅広くなっているけれども、穴の開いていない面は細くなっているので、最初に糸を引っ掛ける時は、細い面で引っかけるの。
それから指の腹でしっかり押さえながら入れていきます。押さえる時は、爪ではなく、指の腹で先端をしっかり押して入れて下さい。
(林) 唾をつけて、ピッと通してきました(笑)でも、折角、合わせた糸がバラバラになって しまいます。この方法だとちゃんと2本が一緒に通りますね。
(斉藤) そうでしょう。すぐに慣れますよ。
(林) 二本どりの時は、一本ずつ糸を取り出して合わせるとの事でしたが、いきなりニ本を一緒に抜いてはいけないのでしょうか。
(斉藤) ダメですね。刺しゅうをしていると、必ず糸がよれてくるんです。だから六本どりで刺しゅうをするときも、束から引き抜いていきなり針に通す事はしません。必ずバラバラにしてから合わせ直して使います。
(林) ちょっと面倒に思えますが、このひと手間が大事なんですね。
刺しゅう道具のおはなし 1/4