(林)次に刺しゅう枠なのですが、最近、新しい刺しゅう枠も出てきていますので、どのような物を選んだら良いか教えて下さい。
(斉藤) 断然、今はラップスタンドがおすすめです。でも、これは体験しないとわからないのですが、台になっているので、両手が使えますからとても作業がしやすいんですね。
(林) 他に刺しゅう枠を選ぶ時のポイントはありますか。
(斉藤) あまり刺しゅうの経験のない方は、一度に刺しゅう枠に張れる面積が多い方が良いと思って、大きな刺しゅう枠を買ってしまいがちなんですが、刺しゅうをする時は、枠に張った状態で、どこからも裏側に手が届かないと刺しにくいものなんです。なので、小さな枠を選んだほうが使いやすいですね。
(林) 私も最初は何も知らずに、大きなサイズを買いましたが、裏側に手が届かない所があると、その都度張り替えなくてはいけないので、小さい方が良いという意味が良くわかりました。
刺しゅう枠の場合は、大は小を兼ねるという事はない様ですね。
(斉藤) 大きくても刺せる場所は限られますからね。結局は小さい方が効率が良いんです。
(林) ネジのないワンタッチ式というのがありますが、ネジ式とどのような違いがありますか。
(斉藤) 昔ながらのネジ式刺しゅう枠は、刺しゅうをしているとネジに糸が引っ掛かってしまうという事がよくあります。ワンタッチ刺しゅう枠は、ネジがないので、引っかかる事もなく、とてもスムーズに作業が進みます。
(林) ワンタッチ刺しゅう枠の使い方を教えて下さい。
(斉藤) まずは、このバネを引いて外枠から外します。そして、刺したいと思う生地の後ろ側からはめ込んで生きます。刺す時は、表側から刺していきます。そして、外す時も裏側からバネを引いて外します。
(林) 表側から無理やりはめ込むのではないんですね(笑)
(斉藤) そうよ(笑)生地をはめ込んだり外したりする時は、必ず裏側のバネを使います。
旅先とかで仕事をする時は、やはりラップスタンドでは大きいのでワンタッチタイプを持って行きます。
(林) 先生がラップスタンドをお好きなのは、どのような所ですか。
(斉藤) そうですね、例えば、ベッドカバーサイズのキルトに刺しゅうを加えるという時は、この小さな刺しゅう枠では、一体どこに枠があるのかしらという感じですし、重くて手で支えているのが大変でしょう。
このラップスタンドは、台になっていますから大きな作品にも刺しゅうが入れやすいんです。
そして、こちら側に溝がありますので、ピンと生地を張る事ができますし、しっかりと生地を押さえてくれるのでとてもやり易いんです。
(林) 刺しゅうの場合は生地をピンと張った方が良いんですね。
(斉藤) 極端に引っ張ってはいけないですけれども、張ったほうがきれいです。特にパンチングニードルと言って、図案の上をプチプチと針で刺していく手芸をする方には、このラップスタンドが断然おすすめです。
実際に刺しゅうを入れてみましょうか。ハートの図案を描いてアウトラインステッチをいれてみましょう。
テーブルの上でも出来ますけれども、ラップスタンドは膝の上で出来る所も便利なんです。
刺しゅうをきれいに入れるためには、動かないという事もとても大事です。アウトラインステッチも動かないととてもきれいに出来るんです。
特にね、コロニアルノットステッチを入れる時は、両手が使えるので、ラップスタンドを使うとすごく早いの。
(林) 実際に普通の刺しゅう枠とラップスタンドの両方を使って違いを見せていただけますか。
(斉藤) ラップスタンドからしてみましょうか。
コロニアルノットをする時は、左手で糸を回すんです。
そして針を抜かないで次の目に針を出すんです。
だから早いの。
(林) コロニアルノットは8の字に糸をまわすので、両手が使えるというのは魅力ですね。
(斉藤) 普通の刺しゅう枠ですると、こんな風に刺しゅう枠が落ちない様に押さえなければいけないので、右手で糸を回さなければいけないんです。
それだと時間がかかるでしょう。
でも、私はこれでも慣れてしまっているから、早いのよね(笑)
(林) あまりの手際の良さに、全く違いが伝わりません(笑)普通の刺しゅう枠でも、全く問題ない気がします(笑)
私は、普通の刺しゅう枠でも、手の動きが先生と違うんです。変な癖があって、バタバタと必要以上に手を動かしてしまうので、コロニアルノットがゆるくて、ちっともきれいにいかないですし、大きさが均一にいかないんです。
(斉藤) 一回ずつしっかり締めていかないとダメなんです。糸が離れないようにしっかり押さえないとヨレヨレのコロニアルノットになっちゃう。
(林) もう一回修行し直します(笑)
(斉藤) (笑)コロニアルノットは厄介よね。
(林) そうなんです。でも、可愛いステッチなので、作品に使いたい思う事が多いんです。
(斉藤) 大きさが均一に出来るしね。
刺しゅう道具のおはなし 3/4